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2015.09.01
【コラム】内藤忍氏/ 株価と為替の急落と海外不動産投資

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8月の下旬に中国経済の減速とアメリカの金融引き締め懸念を材料に、世界的に株価が大きく調整し、為替も円高が進みました。日経平均は17,000円台まで値下がりし、為替はドル円で見ると一時116円台まで8%近くの円高ドル安となりました。金融資産で取引をしている人にとっては、精神的に負荷のかかる相場環境でしたが、不動産投資家の受け止め方は随分違ったようです。

市場が急落している週に、私がオーナーを務める「SHINOBY’S BAR 銀座」で不動産投資家が集まるイベントがあったのですが、株価や為替の急落は話題にもならず、不動産投資の物件をどこに買うかというテーマで持ちきりでした。このイベントは国内不動産の投資家が対象でしたが、海外不動産の投資家であっても状況はあまり変わらないと思います。

確かに、海外不動産の場合は為替が円高になれば、購入した物件の価格は円ベースでは下がります。マレーシアリンギットやタイバーツなどはドルに対して下落しており、マレーシアリンギットは対ドルで1998年以来17年ぶりの安値を付けました。タイバーツも8月に発生したバンコク中心部での爆発テロ事件を受けて6年ぶりの安値となっています。

しかし、為替の変動で一喜一憂しても不動産の場合は流動性が高くありませんから、株式や為替のように瞬時に売買することはできません。税金のことも考えれば、最低でも5年から10年の投資スパンで考える必要があります。目先の為替の変動よりも長期的な通貨価値の見通しから投資判断すべきなのです。その意味では短期的な為替変動を気にしても意味がありません。

また、既に完成してテナントが入っている物件であれば、毎月の賃料収入が入ってきます。インカムゲインの収益を考慮すれば、実質的な購入コストは下がっていくことになります。家賃利回りが7%であれば、5年経てば物件価格が65%に値下がりしても損益トントンと考えることができるのです。為替が円高に振れたとしても、インカムゲインによってその為替差損はカバーできるのです。

むしろ、海外不動産には為替以外の不動産自体のリスクがあることに注意すべきでしょう。家賃の下落リスクもゼロではありませんし、空室リスクになれば管理費の分で収益はマイナスになってしまいます。またエリアによっては、地震や火災などの災害リスクがあります。個別の物件によっては入居者とのトラブルが発生する可能性もゼロではありません。

しかし、不動産のこれらのリスクは金融マーケットの変動とは基本的に無縁です。個別の物件に固有のリスクと言え、資産の一部に組み入れることによって他の資産との分散効果が大きくなるのです。不動産も1つの物件だけに集中するとリスクが大きくなります。金融資産と組み合わせること、そして投資対象国を分散させることで資産運用はさらに安定します。

インカム収入によって時間と共に安定した資産形成が実現できる。それが不動産投資の醍醐味です。軌道に乗れば、短期の為替や株式の変動からリモート(隔離)された資産運用を実現することができるでしょう。

※本コラムは、マネックス証券の創業にも参加された、資産デザイン研究所代表取締役の内藤忍氏より寄稿頂いた原稿を基に構成しています。

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投稿更新日:2015年09月01日