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2024.06.21
【コラム】データセンター建設が相次ぐジョホール州、その背景やメリットは?

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大量のデータの保管や処理を担うデジタル社会の重要インフラ「データセンター」。特に、近年は本格的なAI(人工知能)時代の到来によってその重要性は一段と増してきており、データ処理量の爆発的な増加に対応するため、世界各国のIT関連企業がデータセンターへの投資を加速させています。

実は、その受け皿のひとつとなっているのがマレーシアです。中でも、南部ジョホール州の存在感が増しており、米不動産コンサル大手クッシュマン&ウェイクフィールドが発表した「グローバル・データセンター市場ランキング(2024年版)」で、ジョホールバルはアジア太平洋地域の7位と首都クアラルンプール(同8位)を上回り、シンガポール(同6位)に次ぐ位置につけています。

本コラムでは、ジョホール州でデータセンター投資が活発化している背景や、それによるメリットなどについて解説・考察していきたいと思います。

なぜ世界のIT企業がジョホール州に注目するのか?

現在、東京・シンガポール・北京・上海・香港・シドニーなどのプライマリー市場(主要なハブ地)では、開発用地の不足やコストの高騰などによって、データセンターを新設するハードルが上がっています。そのため、企業の関心はセカンダリー市場(プライマリー市場の周辺地域)に広がっており、ジョホール州はそうした需要の受け皿のひとつになっていると考えられます。

では、ジョホール州のどのような点がデータセンターの誘致における強みとなっているのでしょうか?

シンガポールとの経済圏化の深まり

2024年1月、マレーシアとシンガポールの両政府は、マレーシア南部ジョホール州のイスカンダル・マレーシア地域を越境経済特区「ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)」として共同開発することで合意しました。

地理的条件の類似性から、国際金融センターの香港と小さな漁村から中国屈指のハイテク都市に発展した深センのような関係をモデルとしていくようで、これにより陸続きで繋がるジョホール州とシンガポールの経済圏化が一段と加速する見通しとなっています。

一般的に、データセンターの場所がエンドユーザーから離れれば離れるほど、通信遅延が大きくなるとされています。デジタル先進国であり、世界各国の企業がASEAN地域の統括拠点を置くなど、大きなデータ需要があるシンガポールとの地理的・経済的な近さは、セカンダリー市場としてのジョホール州の価値を一段と高める形になっていると言えるでしょう。

豊富で安価な開発用地

データセンターを建設するためには、まとまった平坦な土地が必要です。シンガポールの場合、東京23区と同程度の国土しかないうえに、すでに都市開発もあらかた完了しているため、条件を満たす土地を取得するのは非常に難しくなっています。

一方、ジョホール州の場合、2006年から始まった大型都市開発プロジェクト「イスカンダル計画」の対象エリア、かつ経済特区JS-SEZの対象になることが見込まれている州南部のイスカンダル・マレーシア地域だけに限っても、シンガポールの3倍の面積を有しています。

イスカンダル計画によってさまざまな施設が誕生したとはいえ、イスカンダル・マレーシア地域にはシンガポールより格段に安い土地がまだまだ豊富に余っており、データセンターの建設場所に困る状況にはありません。

建設コストが安い

地震リスクが低く建物の構造をシンプルにできるマレーシアは、世界的に見ても建設コストが安い国として知られています。少し前のデータになりますが、オランダの建設コンサル大手アルカディスの調査では、首都クアラルンプールの建設コスト(2019年)は世界主要100都市の中で4番目に低いとの結果が出ています。

電力コストが安い

資源国であるマレーシアは、エネルギー自給率が100%超(シンガポールは約2%)と高い水準にあるため、電力コストは相対的に見て非常に安価です。産業用のピーク時電気料金(2024年第1四半期時点)は、シンガポールの1kwh当たり0.2722Sドル(約31.70円)に対し、マレーシアは0.337リンギ(約11.30円)にとどまっています。

また、国営電力会社テナガ・ナショナルがデータセンター向けに電力を優先供給する方針を発表していることも、電力の安定供給が不可欠な同事業を行ううえでは安心材料になっていると言えるでしょう。

自然災害リスクが低い

データセンターに適した立地条件として、自然災害のリスクが低いことが挙げられます。その点、マレーシアの周辺には活断層がないことから地震や津波はほぼ起きず、赤道付近に位置することから台風の影響も受けないため優位性があります。

ジョホール州への直近のデータセンター投資計画事例

YTLパワーがジョホールに建設予定のデータセンターイメージ

まずは、2020年以降にジョホール州でのデータセンター建設計画を明らかにした主な企業をご覧ください。

  • IT大手マイクロソフト(米国)
  • データセンター大手エクイニクス(米国)
  • 通信大手シングテル(シンガポール)&通信大手テレコム・マレーシア(マレーシア)
  • データセンター大手ブリッジ・データセンターズ(シンガポール)
  • データセンター大手プリンストン・デジタル・グループ(シンガポール)
  • IT大手バイトダンス(中国)
  • データセンター大手GDSホールディングス(中国)
  • データセンター大手チンデータ・グループ(中国)
  • データセンター大手エアトランク(豪州)
  • 発電大手YTLパワー・インターナショナル(マレーシア)&半導体大手エヌビディア(米国)
  • 政府系投資会社Jコープ(マレーシア)&三井物産(日本)

中でも注目を集めたのは、ジョホール州のクライ地区においてマレーシアの発電大手YTLパワー・インターナショナルが米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)と提携して進める、総投資額43億ドル(約6,700億円)規模のAIデータセンターの建設計画です。

提携が発表された2023年12月には、AI時代のキープレーヤーとなっているエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が、「マレーシアはコンピューティングインフラに必要な土地・設備・電力を有する国で、東南アジアにおけるAI分野の重要な開発ハブになる可能性がある」と評価。いま世界で最も注目を集める経営者と言っても過言ではない同氏のこうした発言が、世界のIT関連企業がAI分野においてほぼノーマークであったマレーシア、そしてジョホール州への関心を高める一助となったことは間違いないでしょう。

データセンター誘致のメリットは?

高度IT人材の呼び水に

データセンターの運用を適切に行うためには、ネットワークやサーバー、セキュリティなど、幅広い分野における高度なIT人材が必要になります。そのため、データセンターの誘致が進むことにより、ジョホール州にはこれまでいなかったような所得水準の高いITプロフェッショナルが国内外から集まってくることが期待されます。

また、高度IT人材やIT関連企業の流入が拡大することは、現地人材にとってもデジタルスキルの向上を通じて所得水準を大きく引き上げるチャンスとなるでしょう。

ビジネスエコシステムの拡大

データセンターは製造業のように労働集約的な産業ではないため、直接的な雇用創出力は決して高くありません。しかし、データセンターの誘致が進むことで周辺にIT関連ビジネスが集積し、ビジネスエコシステムの拡大が期待できるため、全体として大きな雇用創出効果を発揮する可能性があります。

例えば、2023年10月には台湾のサーバー大手ウィウィン・コーポレーションが、ジョホール州セナイ地区にサーバーラック工場を開設しています。また、2024年3月には日本のIT大手NECも、同州イスカンダル・プテリ地区にサイバー防衛のための監視・攻撃対応などを行うサポート拠点を開設しています。

不動産市場への影響は?

世界各国のIT企業が兆円規模のデータセンター投資を打ち出している中、今後も建設に適した用地はジョホール州を含め世界各地で奪い合いが発生することが想定されます。しかし、数百億円規模の投資資金が必要となりますし、マレーシアでは産業向けの用地は個人では購入できないため、投資先としてはあまり現実的ではありません。

そのため、日本の個人投資家の方がジョホール州のIT分野での発展を見越して投資するなら、データセンターやその周辺ビジネスの恩恵が受けられるような立地のコンドミニアムを選定するのが良いでしょう。では、具体的にどのようなエリアが恩恵を受ける可能性があるのでしょうか?

まとまった平坦な土地が必要という特性から、ジョホール州では主に工業団地が多いセナイ国際空港近くの「セナイ地区」や「クライ地区」、イスカンダル計画の中核エリアであり広大な開発用地を有する「イスカンダル・プテリ地区」にてデータセンターの建設が進められています

しかし、セナイ地区とクライ地区は昔からある一戸建てのローカル住宅街が中心でコンドミニアムはほぼなく、生活利便性の面でも恵まれているとは言い難いため、外国人や高所得層に選ばれるかというと疑問符が付きます。

一方、イスカンダル・プテリ地区は、イスカンダル計画においてジョホール州の新たな生活・ビジネス・行政の中心地となることを目指しているエリアであるため、コンドミニアムやオフィスビル、ホテル、商業施設、病院、教育ハブ「エデュシティ」、人気レジャー施設「レゴランド・マレーシア」など様々な開発が進んでいます。

ジョホール海峡やマリーナに面したウォーターフロントのコンドミニアムがある点も外国人や高所得層の好みであり、イスカンダル・プテリ地区はジョホール州で拡大するデータセンター投資の恩恵を最も受けやすいエリアになるのではないかと考えます。

プテリハーバーの写真 レゴランド・マレーシアの写真

参考物件

Southern Marina Residences(サザン・マリーナ・レジデンス)

ジョホール不動産「Southern Marina Residences」

「Southern Marina Residences(サザン マリーナ レジデンス)」は、ジョホール州南部イスカンダル・マレーシアの中でも格段の人気を誇るイスカンダル・プテリのウォーターフロント開発エリア「プテリハーバー」において、プライベートマリーナを眼前に収める希少性の高いロケーションに、2019年に誕生した34階建ての高級コンドミニアムです。

⇒「サザン・マリーナ・レジデンス」物件詳細はこちら

間取り 販売価格 専有面積
1SLDK 約3,510万円~ 78m²~
2SLDK 約4,210万円~ 121m²~
3SLDK 約6,240万円~ 186m²~

※物件価格は1RM=33.00円換算で表示しています。

Puteri Cove Residences(プテリ・コーブ・レジデンス)

ジョホール不動産「プテリ・コーブ・レジデンス」

「Puteri Cove Residences(プテリ・コーブ・レジデンス)」は、イスカンダル開発エリアの中でも格段の人気を誇るイスカンダル・プテリ地区の「プテリ・ハーバー」に2018年に誕生した、全ユニットからマリーナまたはジョホール海峡を眺望可能な33階建ての高級コンドミニアムです。

⇒「プテリ・コーブ・レジデンス」物件詳細はこちら

間取り 販売価格 専有面積
2LDK 約4,780万円~ 84m²~
3LDK 約6,870万円~ 119m²~

※物件価格は1RM=33.00円換算で表示しています。

マレーシア不動産についての最新情報

マレーシア不動産についての最新情報は下記リンク先よりご確認ください。

お問い合わせ用Webフォーム、フリーダイヤル(0120-978-055)、又はE-mailにてお気軽にお問い合わせください。(土日祝を除く毎日10:00~19:00)

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投稿更新日:2024年06月21日